第一回電脳建築最適化世界選手権に参加しませんか

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このコンテストの関係者ではないが宣伝してみる。
電脳建築最適化世界選手権(WCCBO:World Championship in Cybanetic Building Optimization)という空気調和衛生工学会主催のコンテストがある。サイトをみるだけでは内容が分かりにくいが一応フライヤーに概要が書いてはある。
参加が決まっている人はマニュアルを読み込めば問題ないので、面白そうなら参加したいという人に向けて全体像を軽く把握できるようにしたいと思う。なお、解釈が間違っている可能性はあるし、今後内容が変更されたりするかもしれない。

概要

このコンテストは誤解を恐れずにざっくり言うと室や熱源の「設定温度の年間のスケジュール」を最適化するコンテストである。

電脳建築最適化というタイトルだが平面プランや構造などの最適化は全く関係がない。「空調制御を最適化して(省エネ性×快適性)の値の大きさを競う」というコンテストである。温度が変われば快適性や機器効率が変わるので上手にバランスを取る必要がある。実物件では条件が揃えられないため、エミュレータを使用して人間の位置や室内環境や熱源システムを模擬することで参加者全員同一条件としている。エミュレータでのバーチャルな世界を想定してるためか「電脳」とついている。デジタルツインのようなものに応用したいのかもしれない。

内容としてはエミュレータ上で設定温度などの年間のスケジュールを決めた「空調制御についての設定ファイル」を提出して「省エネ性×快適性」によるスコアを競うものになる。さらに任意参加ではあるが、リアルタイム(時間はエミュレータ上で圧縮されている)に設定温度を送信して空調制御を行う部門も存在し、自由度が飛躍的に高まることになる。

エミュレータは配布されるので自分で好きなだけ試すことができ、エミュレータ内の時間の進行速度はある程度(1~960倍)調整できる。ただし、管理者権限が必要なので会社で参加したいが権限が貰えない様な場合が仮にあるならば面倒かもしれない。これはBACnet(建築設備の自動制御で使うプロトコル)通信を行うためなのだが、BACnetについての事前知識は全く必要ない。また、任意参加の部門では運営のサーバーにVPN接続を行う必要がある。エミュレータWindowsの実行ファイルだが、C#ソースコードも配布される。MacLinuxで自力でビルドするのが現実的かについては現在不明である。

スケジュール

(~4/12金)参加申し込み

参加申し込みが必要で4/12までに申し込む必要がある。参加費なし賞金なし、誰でも匿名でも参加可能でチームでも個人でもよい。資料が郵送されるようなので代表者の住所は必要。
参加申し込み後に資料が送付されるように書いてあるが、すでに公式サイトに資料がアップロードされている。ただし、開始するまでに内容が更新されるかもしれない。

(6/7火)説明会、オフライン部門開始

空衛学会の会議室で説明会のようなものがあるが、参加は任意。遠隔地用に動画の配信があるかもしれない。この日にとりあえず一度提出をして翌日には順位が公開される。

(6/7金~7/7日)オフライン部門

エミュレータ上で年間の空調制御を決めて作成した「空調制御についての設定ファイル」を提出し、主催のサーバー上で計算した結果を競う。6/7に一度提出すればその後何もしなくても問題はない。サーバーでの計算は1日かかるが、期間内であれば何度でも再提出してスコアを更新できる。

(7/8月~8/7水)オンライン部門、任意参加

この期間は運営サーバーでエミュレータの速度を12倍にして1ヶ月で1年間を模擬している。参加者はリアルタイムに状況を把握しながらVPN接続で制御の変更を行う。基本的にプログラムを用意して一ヶ月間休みなくPCを動かすか、クラウドサービスを利用することになると思う。PCに張り付いて手動で操作してもよい(そのための実施期間?)。やり直しが効かない。

対象

マニュアルの付属資料に対象建物の平面図や機器表と系統図やゾーニング、制御のブロック図と機器効率の曲線などがある。対象はオンライン、オフライン共通と思われる。公平性から考えると参加申し込み後に送付される内容が現在と違ってもおかしくはないと思うが、そこまで配慮しないかもしれない。

  • 7階建で延べ床10,000m2くらいのテナントビル
  • 人員1000人近くが確率的に動き回る(乱数のシード値は参加者共通)
  • 中央熱源式で主な機器はガス焚き吸収式冷温水発生機と冷却塔と空冷モジュールHPで温度成層型の蓄熱槽がある
  • 電気室や中央監視室などの空冷PACは対象外

入力

  • 設定温度等の制御パラメータを指定する
  • 一つ一つ設定するのは大変だがエクセルで一括設定ができる(その他のインターフェースもある)
  • オフライン部門の制御パラメータは最大20の日程のグループに分けてそれぞれ設定する。設定ファイルを提出する
  • オンライン部門ではリアルタイムに設定値を送ることで独自制御アルゴリズムを実現可能。VPN接続で直接設定する

出力

  • 月1回の快適性アンケート
  • GUIで表示されるデータの1分間隔のログのcsvファイル
  • その他のGUIで表示されない情報は基本的に得られない
  • デフォルトの制御に対する省エネ性と快適性の値(目的変数)は毎分得られる

GUI

以下のようなBASを模擬したものが用意されている。
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おわりに

電脳建築最適化世界選手権は以下のようなものである。

  • 設定温度等を入力して(省エネ性×快適性)の大きさを競う
  • 省エネ性や快適性を算出するエミュレータは与えられる
  • 誰でも無料で参加可能
  • 参加申し込み(4/12まで)
  • オフライン部門(6/7~7/7)、膨大な制御パラメータの最適化
  • オンライン部門(7/8~8/7)、最適な制御モデルの構築

空調に詳しくない人にも興味を持ってもらえればと思うのだけれど、年間計算最短9時間10分くらいかかるようなので力技の最適化は少しつらいかもしれない。第一回なので運営側も手探りなところが多いと思うけれど盛り上がればいいなと思う。